文責:山野和人(常務)
本の話(文藝春秋社)、波(新潮社)、図書(岩波書店)、青春と読書(集英社)、本(講談社)、本の旅人(角川書店)、本の窓(小学館)、ちくま(筑摩書房)、本が好き(光文社)、月刊百科(平凡社)、一冊の本(朝日新聞社)、本の時間(毎日新聞社)
これらのタイトルを読んで何の本かお分かりの方はある程度の読書人だと思われる。そうです、各出版社が出しているPR誌です。良心的な本屋さんではレジカウンターの横に積んであって、一応頒布価格は付いているが無料で持ち帰れるようになっている。
PR誌とはいえ新刊情報はもちろんのこと、連載や書評およびインタビュー記事、コラム、エッセイなども掲載され、けっこう読み応えのある内容となっている。おまけに年間購読料1000円ほどを払えば毎月自宅まで送ってくれるという、本好きには大変ありがたいものである。A5判と図体は小さいが内容だけでなく表紙を含めて各社の色合いが強く出ており、ある意味で各社の顔となっている。私はこれらが届くのを毎月楽しみにしているが、各出版社とも発刊が20日頃に集中しているため、月末は読みこなすのがけっこう大変である。
内容および配送コストを考えれば、1冊100円あまりではとても元は取れないと思うが、自社に関心をもってもらう、あるいは自社に繋ぎ止めるための販促費と考えればどうだろうか。
全国紙の2面あるいは3面の三分の一を使っての広告は、それはそれで幅広い読者に対しての新刊情報としては有効で、いわば広く薄くのPRだろう。また、全国紙の日曜版に掲載される書評欄で取り上げられるのも、本に興味を持っている人には貴重な情報源である。但し、こちらは取り上げられる本の数が圧倒的に少なく且つ出版社側でコントロールできない。とはいえ取り上げられた本はある程度の販売数が見込める可能性は高い。
PR誌の場合には新刊情報を始めとする自社発行図書の案内はもちろんだが、インタビューや書評など新刊本に関するさまざまな情報が付加されて掲載されており、結果として購買意欲をそそる内容となっている。
また、PR誌のもうひとつの大きな目的として、各社とも読書人の拡大や掘り起こしというか、本を読むという楽しみを知ってもらうことがあるように思われる。将来にわたっての読書家を育てる、読書人口を幅広く裾野を広げていく、そのために単なる新刊情報だけでなく、連載や書評およびインタビュー記事、コラム、エッセイなどが充実している。
そういう意味ではPR誌を年間購読している人は、出版社から見るとABC分析でいえばSランクあるいはAランク顧客にあたるのではないだろうか。
さて、翻って我々にとって志のある顧客を繋ぎ止めるための手段や方法はどういうものが有効なのか。また将来にわたってSランクあるいはAランク顧客を育てるために普段からどういう情報を発信したらいいのか。本という現物がないだけに悩ましい問題である。
